月に手を伸ばせ

アートとバイク。思ったことを何処かに残したい。

私とエレカシ#33

学校では異質を極めていた。少しでも人がそばに来たら叫ぶ。
触られたら殴りかかる。そんな奴だった。

スクールカウンセラーはそんな私を放っておいてはくれなかった。
向き合って話をしようと一生懸命にいう。それがそいつの仕事だった。

共感覚自体もかなりひどくて、授業の声がまったく聞こえないくらい感情の音が聞こえていた。

かなり重い症状なのは自分でもわかっていた。

音楽の時間どうしても合唱の不快な声に耐えられず、吐いてしまう。血も吐いていた。

目が覚めると病院だった。
点滴を打たれながら、カウンセラーがゆっくり話しかけてきた。
「痛むのかい?おなかの焼き跡は…」
そういってくる。
「別に…」
朦朧とした頭で答えた。
「ずいぶんと昔のものからあるみたいだけど」
私はそっぽを向く。
「もう帰る。仕事がある」
そういって立とうとする。
起き上がろうとすると天井がゆがむ。
「もうずいぶんとちゃんと寝ていないね」
そういいながら私を支える。
「親御さんに…」
カウンセラーは言いかけたが私はすぐにさえぎった。
「それだけはやめろ!!」

「話してもらうよ、僕と君の話は誰にもしない。これは法律とか、そういうものじゃなくて僕と神様の中で決めたポリシーだから」
そういって私に笑いかける。
「宗教なんて気持ち悪い、キリスト教なんてくそくらえだ」
そういって叫ぶ。
「君にはそうだろうけど、君が好きなものをそんな風に言われたら君は怒るだろ?」
そういって私の作品のノートをぽんぽんとたたく。
「僕と君では、まるで世界が違って見えているようだね。絵を見たらわかった。スケッチって書いてあるけど、君にはあんなステンドグラスのような世界が広がっているのかい?」
そういって私のスケッチを私に差し出す。
「そんなもの…」
そういってスケッチを奪い取ろうとするとさっとカウンセラーは私から絵を離す。
「話してくれないと僕は君に何もしてあげられない。君はなぜこの学校に来た?何でわざわざこんな遠くの学校に無理して通ってるんだい?」
ゆっくりと、それでもはっきりと私に聞く。
「…映画を作りたい。だからW大学の学部に入りたい、ここには推薦枠がある。ここで絶対に成功しないと人生が狂っちまう」
私はぽつぽつと話す。
「そうか、推薦枠が来てここに来たんだね。生活費はどうしているの?アルバイトは許可されているみたいだけれど、一人で暮らすにはいろんなものが必要だろ?」
また尋ねる。
「居酒屋で、料理運んだり、厨房で働いたり…」
口をつぐむ
「それで、足りるとは思えないけどね、うちは何もかも高いから学用品だけでもかなりの額だ。親御さんが出してくれたのかい?」
私の顔を覗き込む。
「・・・・・・・・・」
言葉が出なかった。
「言いたくないか…実はね、これはきっとただの君への嫌がらせなんだろうけど、君が財布を盗んだことにされていてね…あぁ気にすることはない。だって君が倒れていたのはみんな知っているし、そんなこと誰も疑ってないけど、君の財布にもかなりのお金が入っていたからね、それとコンドーム」
そういって、私の財布を取り出す。
「なんだよ、男がいちゃ悪いかよ」
矢継ぎ早に言葉をさえぎる。
「おぉ、それはすまない。でもその彼氏は、A高校の生徒だろ?君の写真で知ったんだけど…でも彼とは会っていないんじゃないかな」
そういって手帳のバイトの文字の羅列を見せつける
「なに。勝手に俺の持ち物あさってるんだよ!」
大声を出す。自分の耳が痛い。
「なんなら、いま、ここで、君の彼氏に連絡してもいいんだよ?そんなこと僕はしたくないけど。」
そう、カウンセラーは私のケータイを触りながらいう。
「やめて…」
力なくつぶやく。
「じゃあ、話してくれるね」
そういってカウンセラーはわたしに笑いかけた。

とうとうと、半日かけて私は話した。

「君は僕が牧師だからどう答えると思うかな、信仰と希望と愛最後には何が残ると思う?」

 

そう言って1度顔をあげる。

「信仰とか言うんだろ?」

そう言って言葉を吐き捨てた。

「いや、愛だよ。最後には愛しか残らない。君は愛されてるんだよ。」

カウンセラーはにっこり微笑んだ。

 

誰か俺のこと

救ってくれるというのか?ah

短いようで長い毎日を転がり続ける

 

「君の仲間達が君を見たら泣いてしまうから、君は誰にも助けを求めなかったんだろう?」

カウンセラーは私を見やる

「世の中に悪人なんて2割もいない、みんな欲で生きた時悪にも善にもなる。その変わり目怖い、だから人に助けられるのが怖い、人を好きでいたいから」

そう答えた。

 

シャレにゃならないぜいてもたってもいられない

絡みつく月の光の下で

臆病な俺を笑うのさ

 

「どうかちゃんと生きて欲しい。君が助けてと言ってくれればそのバイト先のオーナーもすぐに法的に対処出来る。」

そっとカウンセラーは手を伸ばした。

私は心から怖くなり咄嗟に体をこわばらせる

「強い君がそんな反応をしてしまうなんて君がノートに書いているこの人はなんて思うだろうか?"もっと力強い生活をこの手に"そう言ってくれたのは。君をずっと助けてくれた音楽に君はどんな証をするんだい?」

もっともっと

熱い愛をくれよ

神様夢でも心を震わせる

それでもそれでも

あなた無しでは居られない