月に手を伸ばせ

アートとバイク。思ったことを何処かに残したい。

私とエレカシ#32

「何でうちで働きたいと思ったの?」
禿げ上がった頭をなぜてにこにこ笑いながら私をみる。
「自分は、高校のお金とか、生活費とか、、自給高かったし、高校生でもいいって書いてあったので。応募しました。」
私は自分の腕をギュッとつかみながら、その禿おやじの顔を見た。
「君は…ふぅん、お金が必要。それ以外に何も言わないんだね。いいよ、明日からおいで」
そういってすぐにバイト先が決まった。

居酒屋で、もともと料理なんて苦手じゃなかったし、
とにかく体を動かすことは苦痛ではなかった。
学校が始まるまでに、お金をためないと、そう思った。

だからおやじが身体を触ってきても我慢していたし、
身体を触った後はお金をくれたから、それを容認した。
おやじがエスカレートして私の身体に簡単に煙草を押し付けてきたり、
暴力をふるいながら自分の欲望をぶつけるころには私は制服をちゃんと買えていたし、学校の教科書も買えた。

入学式の日、学校に行くと、きらびやかなスーツを身にまとった保護者達に、
化粧を施した入学生たち、そして厳かな正門がビカビカに光ってみえた。

県内では有数の大型校で、唯一行きたかった学部への切符を持っている学校だった。

中古でも高かった学生鞄に中古でサイズを合わせた制服。そもそも着崩す気が無くても私は目立ってしまっていた。

「あの子は、どこの学校の子?中古の制服、ボロボロじゃない!!」
ひそひそと噂話が聞こえてきた。
分かっていた。こうなることくらい。
「えぇっあの子…」

眼光鋭く、さっきから自分の噂をする奴らを睨み付け、特待生用のクラスに入っていく。
明らかに異質、明らかに場違い。
学校の教師は私をかわいそうな子くらいに扱っていて、頼ってきていいのよ、と、頼れない要に優しさで甘く拒絶した。

(お前にここはふさわしくない)
聞こえるはずのない母の声と闘いながら。

もうすでに少し精神が崩壊していたのかもしれない。
誰も、話しかけてこなかったし、私も誰とも話そうとしなかった。

周りの人間が当たり前にできることは、当たり前にできているふりをした。

クラスになじむように、誘ってくれた人と出かけてみた。
ゴディバのドリンクが500円より高くて、
何がおいしいのかすらわからなかった。やっぱり人とつるむのをやめた。
私の一食分より高いお金を友達という仮初のぬくもりのために使うことは今の私にはできなかった。

特待生が外れたらもっとお金がかかる、だから、死ぬ気で勉強してたし、作品も作った。
作品を作るお金、勉強する時間を買うお金、生活をするお金、それだけでもどんどん生活が苦しくなった。
私は仲間になることを捨てた。

教室の会話と私の世界とまったく何にもつながらなかった。
私の生きている世界も、彼らの生きている世界も同じ場所にあるなんて思えなかった。

学校へ行って、行くためにはお金がかかって
毎日毎日フラフラで
仕事して、終われば汚いおやじに弄ばれて

 

夢の中で

夢の中で

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仕事して くたびれて
フラフラして yeah yeah yeah
何にもない この世になるさ
悔やんだって同じこと
明日のことなど 考えずにそうさ
考えられずに yeah yeah yeah

マーシーは一生懸命友達を作っていたし、落ち着くまではいっぱい友達作れ!私も頑張るから。
そんなことを強がって言ったのは私自身だった。甘えたかった。助けてほしかった。
でもすべてを見せてしまえば、愛してくれなくなるってわかっていた。

常に死にたい気持と隣り合わせだった。でも、これでも生き抜かなきゃ。
辛くない辛くない。そう言い聞かせて自分の首を絞める。

タラルラン
oh baby 夢で会おうか
oh baby 夢で楽しもう

息が詰まる、頭がぼうっとする。少しだけ気持ち良かった。
誰もいないこんな孤独は幻覚で解消するしかなかった。

oh君は弱いネ
oh君は弱いネ
明日のことなど考えずにそうさ考えられずにyeah yeah yeah

暗く細い路地が私の前に見える。
自分が大嫌いだった。
カケルに合わせる顔が無かった。
ずっとメールだけで元気だよ、制服を買ったよ!がんばってるよ!そういって受験生のカケルにがんばれと励ましを送り続けた。

マーシーからの電話はそんなに長く話せないとすぐに切った。

たまに誰もいない家に電話を掛けた。コール音が鳴る。その音を聞きながら泣いた。

そうさ俺は夢の中で
主役を演じる
そう夢の中で
うわっつらの あたりさわりのない うわっつらの

みんなの知っている私はどこに行ったんだろう
なんでこうなったんだろう
そう思いながらくたくたになりながら自分の首を絞めた。