月に手を伸ばせ

アートとバイク。思ったことを何処かに残したい。

私とエレカシ#27

秋にはバンドの演奏と、演劇部に書いた脚本の打ち合わせ、あとは放送委員の進行の準備でてんてこ舞いだった。

カケルも今年は生徒会をやっていてなかなか話ができないし、カズキくんも前の彼女と寄りを戻して忙しそうだった。

忙しい方が何かと気楽なのは、きっと静の時間が私にとってとても不安だったからだ。

マーシーはいつも私が脚本を書いたりスコアを書いたりしていると、ヘラヘラと私の眉間をつつく。

「お前顔怖いって。性格もきついんだから、後輩たち怖がっちゃうぞ」

そんなことをいいながら私の横でギターを弾く。

ヘッタクソなメロディーで私に歌う。

それだけで吹き出してしまう。

マーシーがいればどんなに忙しくても笑顔でいれた。

いつでもどこでも、いろんなラブソングをうたってきた。

マーシーに一度やめてくれと言ったが、

「だって俺お前に好きだーってしか言えないのダセェじゃん。いい言葉を聴かせてお前が元気になるように応援するしかないからな。ほらお前、サボテンだから」

といって相手にしない。考えすぎてしまう私と、何も考えないマーシーはきっと気があったんだと思う。

とにかく忙殺される中、唯一笑顔視してくれたのはマーシーだった。

 

文化祭の全てがつつがなくおわり、

校内は受験勉強一色、担任に呼ばれ、市内の学校を勧められた。それを断り大学推薦の堅い福岡の学校を志望校にあげた。

その日のうちに母に伝わり、お前を私学になんか入れないと怒鳴られる。

おばあちゃんは、

「お金は私がだすから」

と泣きながら母を止めていた。

そんなことはわかり切っていた。

母は怒鳴りながら、妹と弟の学費は?どうするのよ足りないわよ。といいながら私の胸ぐらを掴む。

「かあさん。おばあちゃん。ごめん。全部もう決めたことだから、お金はいらない。お金は入学金だけは、もう持ってる。夏の間、墓掃除の手伝いとか洗車やって、自分で貯めた。それで行く。だから、いらない。」

言葉をつまらせながら言う。

母と話せばパニックになってしまう。

妹と弟は柱の影から見ていた。

ひと夏の間、私はバイクの修理やら洗車、墓参りやらで入学金をためた。いや、正直言うとパチンコとか、競馬とかで増やしたのもあったけど、お金はお金だから問題ない。

「じゃあ勝手にしなさいよ。お母さんあなたの家のお金はこの子達に使って頂戴。」

母はおばあちゃんに言う。

「大丈夫なの?一人で、入学金だけじゃないんでしょ?学費は?これからの?」

おばあちゃんは私を見つめる。

「この子はね、なんでも自分勝手にやりたいのよ。こんな格好して学校にいって、カナダも中途半端で逃げ出して、近所の笑いものなのよ。産まなきゃよかった。生まれてこの方親に反抗ばかりして、やるなと言ったことや道徳に反すること、常識を外れたようなことばかりやって、いつか犯罪者になるのよ。いつか」

母は吐いて捨てるように言った。

確かに事実だった。言葉だけ聞けば事実なのでぐうの音もでない。 祖母も私には困っていたと思う。

性別も、共感覚のことも、海外から危険指数が高いなんて診断受けて帰ってきたことも、祖母は薄々気づいていて、それでも何も言わないでいてくれた。

「ごめんね。おばあちゃん。こんな思いばっかさせて」

そう言って家から出た。

おばあちゃんは私を呼び止めたが、家に居ては泣いてしまいそうだった。

カズキ君にメールをしてみる

「今暇?」

「ゴメンな、ちょっと彼女と話があって」

「そうか、なら良いんだ」

カケルにもおなじメールをした。

「すまん、バイト中」

そう、みんな生活がある。いつでもこの二人に頼っちゃいけなかった。

マーシーにも同じメール

「どうした?こんな時間に、お前んちの公園行くわ」

どうしても誰かに会いたかった。だからマーシーがそう言ってくれたとき嬉しくて仕方がなかった。

ゼイゼイ言いながらマーシーは公園に自転車できた。

「お前、なんかあったのか?くらいからよくわからんけど、大丈夫なのか?」

そういって走り寄ってくる。

「いや、進路の話を家族としただけさ。案の定の反応だった。それで、なんか胸が苦しくなるというか、痛いというか、とにかく誰かといたくてそれで」

そこまで言うとマーシーは私を抱きしめて言葉を止めた。

「お前の家のこともよくしらんし、俺は何もしてやれんけど。絶対そばにいるから。もうそんな顔するな。ずっとこのままなんてことないし、もしお前が命の危険にさらされそうなときは俺の親も学校の先生もお前の近所の兄ちゃんも俺が全部引き連れて戦いに言ってやるから。そんな顔したら俺が苦しい。一緒に福岡行くんだろ?よく話したな。話したくないってずっと言ってたのに。いつも一人でたたかわせてばっかだな。お前の人生の苦しいところだけ肩代わりできないなんてごめんな。」

そういって私の背中をぽんぽんたたく。

こういうやつだから私はマーシーがすきだった。

出てくる言葉全部本気でうまいことなんにも言えないけどでもちゃんと正直に何でも言ってくれる。

「だいじょうぶ。一緒に居てほしかっただけなんだよ。いま。いつも大事なのは過去でも未来でもなくて、今なんだよ。だから、今一緒に居てくれて嬉しい。ありがと。」

マーシーの胸に顔を埋めながら言う。

「うちに泊まるか?」

そう言ってマーシーは家に電話をかけ始めた。

「母さん、俺の彼女さ、ちょっと家帰れなくてさ、うん、そう、ちげーよ、そんなんじゃなくて、母さんと一緒でいいから、泊めてあげてよ。うん。うぃー、さんきゅー」

マーシーはそう言いながら私の頭を撫でる。

「自転車で家まで帰ろう。お前も、家に連絡しとけ」

そう言って自転車の鍵を開けに言った。

家に電話をカケルと妹が出た。

「おネエ…今ばあちゃんいるから、そっちにかわるね」

妹は言ってくれた

「どうしたの?帰ってこなかったから、心配したじゃない」

そういっておばあちゃんは泣き出す

「泊めてくれるお友達はいるの?」

おばあちゃんは言う。

「彼氏が泊めてくれるって。大丈夫」

「親御さんも知ってるのね。今度ご挨拶に行くわね。」

おばあちゃんは安心していう。母ならこうはいかない。なんの事情も知らずにあばずれ呼ばわりされるのが関の山だ。

おばあちゃんはそんな事言わない。

「ごめんね。お母さんには私が謝るから、何もいわないで」

そう言って電話を切る。

マーシーは自転車の背に私を乗せ自転車をこぎはじめる。

 

Baby自転車

Baby自転車

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昨日は昨日

明日はそう明日

毎日新しい

何でもないようで そうさきっと

毎日変わってく

 こんな世界でもまだ優しい。

マーシーの漕ぐ自転車のホイールの音、心臓の音聴きながら少し涙が出てきた。

明日の天気を気にするような

気軽なものさ

本当のことは誰も知らない

誰にもわからない

どうせこんな状況長くは続かない。

絶対に打破できる。何があったって生きていける。

バンド仲間と、親友がいる。

そう言って自分に言い聞かせる。

Baby Baby 自転車で

風の中を走ろうぜ

Baby Baby 二人乗り

悲しみの交差点を越えよう