月に手を伸ばせ

アートとバイク。思ったことを何処かに残したい。

私とエレカシ#16

「お前白いなー、や俺も紅顔の美少年だから人の事は言えないけど、パッとみ男だなこりゃ」
とかなんとか身振り手振りで話しまくる。
「わざわざ来てくれて、ありがとう」

そういうのが精いっぱいだった。

そのあとも騒いでいたが、突然

急に真面目な声色で
「おまえ、随分と印象が違うけど、何かあるのか」
そういわれた。
「全部話してくれ、全部聞く準備は出来てる。福岡の観光なんてどうでも良くて、お前に会いに来たんだ」
目の前にカケルがいるというよく分からないシチュエーションで
私は重い口を開いた。

 

とうとうと話していた。
母が家を出て行ったこと。
おばあちゃんが意識混濁の中全く言葉を話せなくなってきた事。
祖父母の家に行っても家に上げて貰えない事。
父がしんどい事。
彼女が出来たけどすぐにふられたこと。
やめたい薬がやめられない事。

全部を話した。
カケルに全幅の信頼を置いていたし。
カケルの言葉のすべては今寄る辺にしているエレファントカシマシから出ている物だったからだ。

全部話す間カケルは真剣に目を見てじっときいてくれた。

そしておもむろにカケルは静かにいった。

「電話する。」
そういって携帯を取り出し、連絡をし始めた。
「もしもし、母さん、俺の親友がさスゲー弱ってたんだわ。…うん。…うん。ちゃんとやるよ。ありがとう。」
カケルは電話を切った。
「出かけようぜ。ずっと部屋にいたんだろ、やべえ顔してんぞ。」
笑いながらカケルはいう。
それ以上は何も言わなかった。
家の周りをかけると歩くなんて不思議な気分だった。
カケルはバイクの話をしたり、学校の話をしたり、エレカシの話をしたりした。

カケルは、私が陰なら、限りなく陽だった。

ふと自分をふりかえると、なんだか恥ずかしいようなもどかしいようなそんな気持ちになった。

カケルは髪も染めていなければ、ピアスなんかもしていなかった。
私はチャラチャラしていたし自分をいかに魅せるかを考えていた。

カケルはすごくシンプルでかっこよかった。

カケルの横顔を見つめていると、
「何だよ、俺は俺だぞ」
そういってデコピンされた。

カケルと歩く時間は優しく過ぎて行った。
「タバコ、くれよ」
カケルが言った。
(こいつ吸うのか)そう思ったけれど黙っておいた。
タバコを渡すと、慣れた手つきで火をつけた。
「ずっとさ、一回始めたらやめられねえんだよな。これ…」
タバコをうまそうに吸いながらカケルは言った。
「お前、ずっとチャット返さなかっただろ。

俺振られたっていってんのに、うんしかチャットよこさないしさ。やっぱり俺天才だな的中した。」

みょーに自信ある、ナルシストなやつだった。なのになんのイヤミもなくて、屈託のない変なやつだった。

「薬抜けるまで一緒にいよう。母さんにOKもらったし、俺はいつまででもいるからさ」

そう言ってにっこり笑った。

今は夏。入道雲が空の大部分を占領していた。

薬がやめられるなんて嘘だろって思った。

「俺にできないことなんてなにもないからな」

そう言いながらタバコを吹かした。

まるで浮雲男みたいに。

煙が雲になるわけないよ
みんなは笑う
すずしい目をして
この男も ニッコリ笑う

 

見ろよ空じゃふわり ふわりと 

雲が流れ
見ろよ ここじゃ ぷかりくゆらす

煙が揺れてる

 

 

浮雲男

浮雲男

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