月に手を伸ばせ

アートとバイク。思ったことを何処かに残したい。

私とエレカシ#12

私はキツネと距離をおこうと務めた。

 

解らなかった。確かに身体は女かもしれない、

 

だけど私は女じゃなかった。

体育の時、どうしても他の子と一緒にいれなかったし。

他の子は声が変わっても、自分の声が高いままなのが嫌だった。

 

心奪われるのは女性で

いつも同じ部活のメンバーの彼女が、メンバーと戯れるのを、甘酸っぱい気持ちで見ていた。

 

キツネが嫌だという気持ちより

それが不自然と感じる自分がどうかしてると思ったのだ。

 

カケルは私をきっと普通の男だと思っている。

だからそんなこと言えないし

カケルに相談はできなかった。

 

とうとうその日が来てしまった。

年に一度の大舞台である文化祭がおわり、

部室によばれ、彼が口を開く前に

 

先に私の話を聞いて欲しいと

性別のことを話した。

騒がしいキツネは、

だまって私の話を聞いてくれた。

 

そして、

「とりあえず、俺の歌聞いてくれよ」

そう言って何度も一緒に練習した曲を弾き始めた。

 

はじまりは今
僕らの目の前にある
迎えに行こう 明日ある限り

いつもの町が
鮮やかに見えたのさ
迎えに行こう 僕らの夢を

悲しみってやつを夏色に変えて

迎えに行くよ 人ゴミの中
新しい町の夢を君に届けよう

はじまりは今

僕らの前に
風になびかせて 行く僕がいる

 

 

 

はじまりは今

はじまりは今

  • provided courtesy of iTunes

 

キツネは歌い終わった後

私を見つめていた。

「おいブスよく聞け!俺はお前が好きなんだ!
男でも女でもよく解らないけどお前が好きなんだ。
お前に歌を書こうと思ったけど、俺はお前に伝えたい言葉はこんな風にしか伝えられないし、
お前がこの歌を歌ってる時にお前と夢を見たいって思った!
お互いヴィジュアル系バンドなんだかメタルバンドなんだかよく解らないバンドなんかやりたくないよな
俺お前と一緒にバンドやりたい。絶対にお前をバンドに入れる。それまでは俺の横にいて欲しい。」

拍子抜けした。

キツネは出会ったころと同じキラキラした目で私を見ていた。

冷めきっていた私を熱くしてくれたのは彼の歌でバンドのメンバーたちだった。

「少なくとも自分は、部長に恋心もないし、男性を今後好きになれるかなんてわからない。
人に好意を向けられたのも初めてで正直何もわからない。」

私は正直に答えた。

「それでもいいよ。そもそも人間としてお前が好きだから。部活引退したら、お前ともっとギターの練習が出来る
お前が必要だ。俺の音楽には。今度は作りたい歌を、伝えたい歌を作りたい。だから一緒に俺と夢を見て欲しい。
恋人として。」

キツネはそういった。

熱い奴だった。自分も元々熱くなりやすいたちで、こいつと音楽をやりたいと思った。

「自分でよければ、部長とこれからも音楽やりたい。パートナーでいたい。」

私にできた初めての彼氏は

スピッツが大好きなヴィジュアル系バンドのボーカルで、
私をバンドに入れてくれた部長だった。

 

許されるなら
バカらしくも
鮮やかな夢を
追いかけていこう
明日ある限り