月に手を伸ばせ

アートとバイク。思ったことを何処かに残したい。

私とエレカシ#11

カケルに2人目の恋人ができ、

カズキ君がプロポーズに成功し婚約した頃、

恋とか愛とかについて考えるようになった。

 

中庭でぷらぷらしていたら、金髪の背の高いキツネみたいな顔をした先輩がギター片手に走り寄ってきた。
「弾いてみろ」彼は私にギターを押し付けた。
いやいやCのコードを抑えてギターを鳴らした。
「そうじゃなくて、何でもいいから曲をやれ!」
先輩は私にすごむ。
殴られたくはないのでとりあえず眠たげな声で尋ねた。
「何がいいんすか?」
「なな、なんか分かんねえけどB'zみたいにひけんだろ!ギター何でもいいからほら」
と先輩はせかした。
B'zといえば…Smoke on the Waterのイントロをそのまま弾く。
「よし、お前は今日から軽音楽部の一員だ」
先輩は目をキラキラさせて私に言った。
「他の奴らもすぐ来ると思うけど、俺はお前にうちの部で一緒にやってほしいって思ってる。よろしくな。」
そう言ってキツネみたいな先輩は消えて行った。
その後すぐにもっちゃりした優しそうな先輩が私のところに来て、やはりギターを弾かせる。
とりあえず同じものを演奏して、ギター部に…のくだりが入るや否や
「あ、軽音楽部です」と答えた。

もっちゃりは散々こっちにした方がいいあいつらは云々…みたいなことを言っていたが
私は他を下げて自分を上げる人間なんて信用してはいけないと思ったので、お断りをした。

その後いかにも世界は私を中心に回ってるって考えてそうな先輩も私を部活に誘ってきたが、同じ理由で吹奏楽部にも入らなかった。

何が起きたのかよく分からなかったが、私のクラスメイトが、音楽室のギターでふざけて校歌を演奏してるのを見て、それを先輩に話して・・・というのが経緯らしかった。

 

部室に入った。

次々に訳の分からんメイクをした男達がさっきのキツネに怒られていた。

「あの、入部届、」

私は差し出す。

キツネは大喜びで、直ぐに私にエレキギター差し出してきた。

「さっきの、もう1回」

もう一度Smoke on the Waterを弾く。

今度はイントロ部分以外も、部員達は黙って聞いていた。

「な、入部前にこれならすげえだろ。」

部員達にキツネは話す。

キツネは嬉しそうだったが他のやつは私をにらみつけた。

そりゃそうだ。出番を奪われるんだ、しかもちんちくりんなガキンチョに。

私は目線が怖かった。弾いていたギターを置き部室を飛び出した。

 

その瞬間キツネがものすごい勢いでタックルしてきた。

 

 

「1人にしてくれ」

私は叫んでいた。

「あ、お前声出るのね。しかもちゃんと声だけは女の子♡」

とかなんとかいって私を引き起こす。

「俺、歌はうまいんだぜ。いつかロックスターになりたい。でもギター上手く弾けねえんだ、だから、俺にギター教えてくれよ。その為だけに部にいてくれたっていい」

キツネはニキビだらけの顔をニコニコさせながら言った。

ギターを教える。その為だけに部にいることにした。バンドではギターは一切触らなかった。

 

バンドではベースパートだった。

音を支える、みんなのメトロノームでいる、それはすごく性に合っていた。

なんならギターよりベースの方が良かった。

キツネにギターを教えて、家に帰ってからはベースを弾き、部活の時にはベースを弾いた。

 

 

カケルにバンドのことを話した。

カケルは大喜びでオレも軽音楽部なんだと言った。

 

 

遠い友達とバンドが私の世界を広げてくれた。

 

 

 

 

うちのバンドは所謂ビジュアル系で、

キツネの作ったよくわからない歌詞に

私が曲をつけていた。

 

キツネと少しずついろんな話をするようになった。

 

キツネには父親がいなかった。姉と妹に挟まれ、家では男一人なんだといった。

そもそも、ヴィジュアル系なんてやるような顔立ちでも無いくせに、ヴィジュアル系をやっていて、ほんとに好きなのはスピッツだとも言った。

 

妙な奴には違いなかった。

ことある事に毎日毎日やつは私を呼び出した。

 

スピッツのナンバーを歌い、絶対に興味のない 

私の文学談義を目をキラキラさせながら聞いていた。

私がギターを弾けば、キツネはニコニコして私の弾く曲を歌った。

歌声だけは綺麗なヤツだった。

草野マサムネに似せてはいたが独特の歌声で、

天にまで届きそうだった。

 

その声を聞くにつけ、いつも彼と目を合わせた

 

あぁ、こいつ私が好きなんだ。

 

そう気づいたのは文化祭の前だった。