月に手を伸ばせ

アートとバイク。思ったことを何処かに残したい。

私とエレカシ#10

中学入学と同時に、制服をきちんとワードローブに仕舞い込んで。
指定のジャージに真っ青に髪を染めて、ピアスと大量のブレスレットを付けて登校し始めた。
小学生の校区は、いわゆる新興住宅地で豊かな家庭が多い校区だったが、
中学の校区は、そこに合わせてもともと地元に住んでいる子どもたちも通うような校区だった。
学校はほぼ二分されていたけれど、私はその新しい派閥に入ることにした。
中学の教室では異質だった。
みんな金髪や茶髪の中、青色の髪の毛は相目立っていた。
先輩に呼び出されリンチされたりはしたが、その程度は予想の範疇だったし、これはカケルとたてた作戦だった。

私をいじめた小学校時代のインテリたちは、もう絶対に話しかけてはこなかったし、
リンチされても、うめき声ひとつあげなかったので、その後は先輩たちも良くしてくれるようになった。

カケルの言ったとおりだった。人は群れなしじゃ生きられないし、異質は受け入れられるために時間はかかるがカリスマになれる。

クラスでは、無理せず過ごせたし、それなりに楽しく過ごせた。

問題は大人たちだった。
帰国子女ゆえの嫌がらせというか、そもそも中学程度の学習を終了させている事、それが気に入らなかったらしい。
わざと、ノートの字が汚いだとか、数字の書き方が違うだとか、テストをカンニングしているだとか、事あるごとに突っかかってきた。
まぁそのたびに、争うのもめんどくさいので言われるがまま対応していたのだが、それすらも煩わしくなって、あまり授業には出なくなった。教師たちは勝手にギャーギャー騒いでいたが、そもそも目障りなんだか服従させたいのか感情で話す人間に何を言っても無駄なので放っておくことにした。

大人は誰も話しかけてこなくなった。
それはそれで快適だった。

 

自由に生きたいんだ。

 

いつもそればかり言っていた。

 

 

家に帰れば酒癖の悪い父と病床のおばあちゃん、
妹や弟は帰りに迎えに行かなければ、祖父母に迷惑がかかる。

放っておけば家事は溜まるし、家計の計算だけでも考え事はぱんぱんだった。

夜中大泣きする弟を父が殴らないように、何度も何度もなだめすかして、目の下はクマだらけだった。


自由になりたかった。

 

 

カケルは全てわかっていた。
だから、何かあれば勉強を手伝ってくれたし、チャットをしている間は楽しいことを話してくれた。
 

カズキ君もおなじだった。
よくおばあちゃんの病院の世話をしてくれたし、
私が極力あたりまえでいられるように、カズキ君のお父さんやお母さんに家事を手伝ってもらうこともあった。


 

だから自由になりたかったけど、愛すべき人も沢山できた。


 

いつも感謝していた。

家族ではない友人がこんなに温かいだなんて私は思わなかったから。

 

カケルの聴かせてくれた悲しみの果て。私は何度も何度もカケルの声で聴いた。
カズキ君にエレカシの話をした。こんなすごいバンドがいると、身振り手振りで説明した。
カズキ君は家にどたどたと入って行って、私にCDを手渡す。
「これだろ?」
私はCDをみた。

エレファントカシマシ SINGLES1988-2001
飾りっけのないモノトーンのジャケット。エレファントカシマシのタイポ、少し懐かしい感じがした。
「何年か前に流行ったからな、買ってたんだ。まぁすぐにはきかねぇから貸してやるよ」
カズキ君は私にアルバムを貸してくれた。

家に帰ってCDを聞こうとパソコンに取り込んでいたら、聞いたことあるカウベルのイントロが流れて来て聞いたことのある声でがなる歌声。

このバンド知ってる…。

瞬間カケルにチャットを送った。
“知ってる。自分エレカシ前から知ってた!”
直ぐにカケルから通話がかかる。
「え。ウソだろ」
“いやいや、やさしさとか浮き草とか!BLUE DAYSとか!ほらデーデ!あれ聴いたことあったんだよ。龍おじちゃんがくれたCDの中に一枚だけあったんだ!THE ELEPHANT KASHIMASHIってアルバム”
やや興奮気味に私はカケルに伝えた。
「それ、ファーストアルバムだぞ。それしか聞いたことなかったのか!もう今すぐ全部聞け!マジで全部聞け!」
カケルも興奮気味に叫んでいた。


ただいま、エレファントカシマシ

龍おじちゃんありがとう。

その時の日記にはそれだけを書いた。

龍おじちゃんには自殺した息子さんがいた。
息子さんの借金を返し終わって、龍おじちゃんはさよならも言わずに後を追った。
それを知ったのは父が飲んだくれてる時に私にそう説明したからで。
おじちゃんの事を思い出した矢先のエレファントカシマシだった。
最初にエレカシを教えてくれた人を本当の意味で送る為にも

日記の2文は私に必要な2文だった。


あなたが育ててくれたから、私には素晴らしい出会いがあった。
あなたがくれた音楽との出会い。

全部の影に龍おじちゃんがいた。

 

 

 

 

花男

花男

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俺の姿を忘れるな
ニタリ ニタリの策士ども
どうせやるなら ドンとやれ
やつらを笑って ワハハのハ